母のこと7

母の父親は一代の庭師だった。
私が今の仕事を終えた後で庭に関連したことをしようと思っているのも誰かが継がないといけないという思いがあるからだ。
出身は恵那とも、広く岐阜とも聞いているが不確かだ。
どういういきさつかは分からないが、東京で庭師の修行を行い、当時の庭師仲間が羨む免許を持っていたらしい。
厳格な人だった。私は恐かった。
癇癪持ちというのだろうか、一度、私の目の前で茶碗どおしを親指と人指し指で強く早くつまみ合わせとうとう二つ共にひびが入った。どうも誰かが茶碗を持って来た時に茶碗に指が入ったのを見たようだ。
汚いと言うことだ。
私は泣いてはいないから泣けないほど恐かったのだろう。
祖母はお茶と煙管を使った煙草が好きだった。
私は愛情を感じたことはなかった。
自分の思いを伝えることが下手な人だったのだろう。